訪問看護管理者が知っておきたい「在宅がん医療総合診療科」とは?-医療連携とお金の流れ-

こんにちは、てっぺい(@teppei_bestlife)です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。私は現在、訪問看護ステーションを7拠点運営しています(もし良かったらホームページもごらんください)。

今日は、先日、訪問診療から案内のあった「在宅がん医療総合診療科」について記事を書いてみようと思います。訪問看護をやっているといつかは目にすることになると思いますので、概要だけでも知っておくことをお勧めします。

目次
  1. 「在宅がん医療総合診療科」ってなに?
  2. 病院からお金をもらう仕組み
  3. 管理者が押さえておくべき3つの実務ポイント
  4. 現場のエピソード
  5. まとめ:「在宅がん医療総合診療科」を知ることが、経営と看護の両方を強くする
  6. おすすめ書籍紹介:在宅医療の質を高める“キーフレーズ”

①「在宅がん医療総合診療科」ってなに?

名前だけ聞くと難しく感じますが、簡単に言うと、「がん患者さんを家で支えるための専門チーム」 です。

がんの終末期になると、「もう入院ではなく家で過ごしたい」という希望を持つ方が多くなります。このときに中心となって支援するのが、この診療科。

在宅がん医療総合診療科では、以下のような医療的支援を行います。

  • 痛みのコントロール(緩和ケア)
  • モルヒネなど麻薬の在宅管理
  • 点滴や酸素療法などの医療処置
  • 家族への精神的サポート
  • 訪問看護・訪問診療との連携調整

②病院からお金をもらう仕組み

在宅がん医療総合診療科の大きな特徴のひとつが、お金の流れです。

「定期往診・緊急往診・訪問看護・処置・医療機器管理・注射・検査などの料金が包括される」というのが特徴で、それぞれを1項目づつ算定する出来高算定とは異なり、一週間ごとに決まった費用が発生します。訪問回数や処置が増えても費用が一定なので、患者様が金銭的な心配をせずに利用できるというメリットがあります。

この中で、我々のような訪問看護ステーションが病院から依頼されることがありますが、その場合、訪問看護ステーションは病院からの委託という形で動くことになります。

つまり、

  • 訪問看護指示書を発行するのは「病院の医師」
  • 医療保険への請求主体も「病院」
  • 訪問業務は「ステーションが代行・委託」で実施

訪問看護ステーションは直接レセプト請求を行わず、病院から委託費(業務委託料)として報酬を受け取るという流れになります。

お金の流れを図でイメージすると…

登場人物役割お金の流れ
病院(在宅がん医療総合診療科)主治医・医療保険請求主体医療保険へ請求し、訪問看護へ委託料を支払う
訪問看護ステーション実際の訪問を実施病院から委託料を受け取る
利用者・家族在宅で療養医療費自己負担(3割など)を病院へ支払う

この構造のため、訪問看護側から見ると「直接利用者からお金をもらうわけではない」 という点が特徴です。間違って患者さんへ自己負担分を請求しないよう注意してください!!!

③管理者が押さえておくべき3つの実務ポイント

1️⃣ 契約形態を必ず確認
 → 病院からの委託契約か、直接請求かを最初に明確に。

2️⃣ 訪問看護報告書の提出は必須
 → 病院が医療保険請求を行うため、報告書の提出は算定要件です。

3️⃣ スタッフへの共有と教育
 → 「この利用者は医療保険扱い」「病院からの委託」などを現場全体で共有。

④現場のエピソード

がん末期のAさん(80代)は、「もう病院ではなく家で過ごしたい」と希望されました。
当初は痛みが強く、訪問看護だけでは対応が難しい状態。
しかし、在宅がん医療総合診療科の医師が24時間体制で疼痛管理をサポートし、病院からの委託契約で看護が継続。
ご家族も安心して見守ることができ、Aさんは穏やかに最期を迎えられました。

医療との協働で、「看護だけでは難しかったケースを支えきれた」実感は、スタッフにとっても大きな成長の機会になります。

⑤まとめ:「在宅がん医療総合診療科」を知ることが、経営と看護の両方を強くする

在宅がん医療総合診療科は、がん患者さんの“生きたい場所で生きる”を支えるために欠かせない存在です。

訪問看護ステーションにとっても、

  • 医療保険対応の理解
  • 病院との契約・請求管理
  • 医師との信頼構築

この3点を押さえることで、安定した経営と質の高い看護の両立が可能になります。通常の訪問看護とは少々勝手が違いますので、その点を理解しながらサービス提供していきましょう。

⑥おすすめ書籍紹介:在宅医療の質を高める“キーフレーズ”

在宅医療・在宅看護をより深めたい方向けに、とても参考になる本があります。記事の内容とも親和性が高いため、最後にご紹介させてください。永井医師が在宅医療専門クリニック「たんぽぽクリニック」を2000年から運営してきた経験をもとに、現場の葛藤や学びを「キーフレーズ(格言)」としてまとめている本です。単なるノウハウ集ではなく、読者が明日からの行動を変えられるような言葉(=キーフレーズ)を集めた、現場者の“支え”になる一冊。在宅医療・がんケア・看取りなど、幅広いテーマ(多職種連携、意思決定支援、看取りの文化など)を網羅しており、訪問看護管理者・スタッフ誰もがヒントを得やすい内容です。

在宅医療の質を高めるキーフレーズ
著者:永井 康徳 出版社:南山堂

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です