こんにちは、てっぺい(@teppei_bestlife)です。
毎年2月・7月に地獄の日々が訪れる加算といえば「介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算」。僕はまさにその担当をしていてデイサービス12店舗分の計画書や報告書を毎年作成しています。毎度毎度、「この書類は意味あるのか?」と思いながらパソコンの前に座っていますが、ありがたすぎる加算ではありますので、従業員のためにしっかり算定し続ける覚悟であります。
そんな介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算。結構な頻度で「これで大丈夫ですか?」的な質問を受けますので、今日は改めてではありますが、それぞれの加算についてまとめてみようと思います。担当者は全従業員へ説明する義務もあると思いますし、特定加算はホームページ等への掲載義務もありますので、今一度要点をチェックしてもらえたらなと思います。
※なお本記事は厚生労働省のHPや令和4年3月11日に発出された介護保険最新情報Vol.1041「介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」の一部改正についてを参考としております。
それでは、スタート!!!
- 本加算の目的って何?
- 介護職員処遇改善加算について
- 介護職員等特定処遇改善加算について
①本加算の目的って何?
目的は3つ。
それぞれについて補足していきます。
目的1:人手不足の解消
まずはこちらのグラフをご覧ください。総務省の令和2年国勢調査結果より抜粋です。
ご覧のように日本は人口が減少するステージにあります。2020年10月1日現在、1億2622 万7千人。2021年9月1日時点で1億2555万9千人とのことですから、この1年で67万人減少したことになります(総務省統計局のページから引用)。まじですか!?って感じですよね。沖縄県の人口が145万人なので、たった1年で沖縄県の半分の人がいなくなったぐらいのインパクトがあります。那覇市の人口は32万人ぐらいなので・・・消滅です。
それだけではなくて、こちら!人口ピラミッド!
2025年には、人口の3.3人に1人が65歳以上、5.6人に1人が75歳以上で、高齢者と生産年齢人口の比率は、1対1.9となっています。つまり、1人ないし2人が65歳以上の高齢者を1人支えていく社会となります。大変な時代です。
このような結果から、厚生労働省はこれだけの介護人材が必要だと算出しています。
人口が減る中で、毎年毎年、介護業界で働く人を増やし続け、2025年位は245万人を確保しなければなりません。数字が大きすぎるとのイメージしきれない部分はありますが、とにかく介護人材を増やす必要がある。だから、給料を上げましょう。そのために、この加算を創設しましたよ!というのが1つ目の目的です。
目的2:職員の定着
給料をあげて介護人材が増えたとしても、その方々が定着しなければ意味がありません。ということで、こちらの表をご覧ください。介護福祉士さんへ「職場を辞めた理由」をアンケートした結果です。
退職には様々な理由がありますが、国としてサポートできるのは左側の赤線で囲んだ部分。一つはやはり収入アップ。だから、この加算を創設しましたよ!ということ。「事業所さん!介護業界から人が去ることがないように頑張ってくださいよ。』というメッセージでもあると思っています。理由の第3位が人間関係っていうのは国にはどうしようもないですからね。
もう一つ赤枠で囲んだ右側の部分。これが3つめの目的につながってきます。
目的3:専門性の高い人材の育成
どんな仕事もそうですが、ある一定期間働き仕事に慣れてくるとここで働き続けた自分の将来像を想像します。その時に「このまま働き続けても・・・」と感じる介護職員さんが多いのは事実だと思います。また、介護福祉士を取得した方の中には、「この資格をもっと活かしたい!」「専門性の高い仕事がしたい!」と思っている人が多いと思います。
一方で、キャリアップしたとしても専門性の高い仕事をしたとしてもそれに見合うだけの給料になるのか?という部分も問題になってきます。キャリアアップすればこれだけの給料がもらえる、専門性の高い仕事をすれば評価され給料もついてくる。そんな組織にしてほしいというのが国狙いです。イメージとしてはこんな感じ。
特定処遇改善加算はまさにそのための加算で、介護福祉士10年以上の方に多く分配するような仕組みになっています。
以上、こういった目的のもと介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算は作られています。実態はなかなかうまく機能していない部分もありますが(意図した通りになっていない)、僕ら経営陣はこういう国の狙いをしっかりと理解して企業経営をしていかなければなりません。
では続いて、それぞれの加算について見ていきましょう。
②介護職員処遇改善加算について
この加算は2015年4月1日スタートしました。算定要件はこちら。
キャリアパス要件などとなんか難しく書いていますが、これをクリアすることはそんなに難しくないと思います。昇給する仕組みを作って、研修計画を作るぐらいなので。この件に関して、もしアドバイスの必要な方がいればお問合せください。サポートします。
ちなみに、処遇改善加算は区分が1・2・3とありますが、これはキャリアパス要件のⅠ・Ⅱ・Ⅲをどれだけクリアするか?によって変わります。下記に報酬が出てきますが、ⅠとⅡでは通所介護で1.6%の差があります。やることはそんなに変わらないので、個人的には絶対に1を算定すべきだと思っています。1.6%の利益を出すのってものすごく大変ですからね。
もう一つ、この加算を算定する上で一番大切なルールは、受けとった報酬の全額を介護職員(もしくは介護職員を兼務している職員)に分配するということです。1円たりとも会社にプールしてはいけません。ここを守りさえすれば大きなペナルティはないと考えていますので、担当者はここに気を使う必要があります。僕の場合、法廷福利費を計算にいれずに試算していきますので、万が一、最終的に分配金額が報酬を下回ったとしいても、法定福利費を入れ込むことでクリアする形をとっています(大きく下回ったらアウトですが・・・)。
では続いて、報酬はどのくらい?ということに関してですが、これはサービスによって変わります。
例えば、僕らの運営するデイサービス(通所介護or地域密着通所介護)の場合、処遇改善加算1が5.9%。350万円の売上のデイの場合、350万円×5.9%=206,500円です。介護職員が2名、介護職員兼務の職員が2名いる場合、この4名で分配することになりますが、分配方法に関しては、全て会社に任されています。1人の介護職員に全額渡しても良いし、4人で均等に割ってもいいし。また、支給方法も会社に任されていて、基本給をアップさせても良いし、手当として支給してもいいし、賞与でもOKです。とにかく全額を対象者へ分配するです。
僕らの場合、処遇改善加算手当という手当を作ったり、賞与に関しても処遇改善加算賞与という形にして、役所からの指導が入った場合、明確に示せるようにいしています。基本給とかに入れ込んじゃうと訳わからなくなりそうですし、役所へ説明する時にめんどくさいので。
同一法人で複数店舗を運営している場合、法人一括で考えてもOKです。例えば、AデイサービスとBデイサービスを運営していて、それぞれに2名づつ介護職員がいて、処遇改善の加算報酬が20万・20万の合計40万円入ってきたとする。この40万円をAデイサービスの2人に全部渡して、Bデイサービスの2人には一切払わない形でも問題ありません。これは特定処遇改善も同じ取り扱いです。
③介護職員等特定処遇改善加算について
この加算は2019年10月1日スタートしました。算定要件はこちら。
一つ目と二つ目の要件は問題ないとして、ついつい忘れがちなのが三番目の「ホームページへの掲載等を通じた見える化」です。ちなみに僕らはこんな感じで毎年自社のホームページに掲載しています。これまで指摘を受けたことがないので参考にしてもらえたらと思います。なお、ホームページ等がない事業所に関しては情報公表ページへの掲載でOKですので、そちらに記載するようにして下さい。
https://drive.google.com/file/d/1C0mce_9E7IRldY3U86Dkoc7J9vJfKZpi/view
当該加算分の報酬に関しても、受けたった全額を職員に分配することが条件になります。前述した処遇改善加算と異なる点は誰にどのくらい分配するか?という点です。まずはこちらをご覧ください。
まず全職員を3つのグループに分ける必要があります。僕らの場合、上記のような形で分けています。これまでの処遇改善加算はAグループとBグループの職員しかもらえませんでしたが、特定加算はCグループの人へも分配OKになっています。
そして、特定加算の目的はキャリアップ制度の構築にあるので、Aグループに属する職員の賃金改善をしてほしいという意図があります。そのため、Aグループの介護職員のうち1人以上は、月額8万円の賃金改善もしくは年収440万円以上となるように設計しなければならないのですが・・・これが中々厳しい。ということで例外が用意されています。上記のような理由であればこの条件は免除されます。僕らの場合、1店舗の売上が350万円程度なので、その1.2%でも35000円。どうやっても月額8万円の賃金改善は難しいですよね。ということで免除されています。
そして、ややこしいのがこちら。
Aグループ、Bグループ、Cグループの中でもっとも賃金改善をしてほしいのがAグループなので、各グループの平均賃金改善額がAはBより多く、CはBの2分の1以下となるようにしてくださいね!というルールがあります。
これのややこしいところは分配した額ではなく「平均賃金改善額」だということと、それを計算するにあたっての人数がAグループとBグループは「常勤換算数」でCグループは「常勤換算数もしくは実人数」だということです。理由はいろいろありますが、そこを深く考える必要はないので割愛します。とにかくそんなもんだと思っておいてください。
ちなみにCグループは実人数で計算した方が平均賃金改善額を低くできるので、常勤間算数ではなく実人数で計算することをお勧めします。
そうすると上記のように平均賃金改善額の割合A>B:Cとなるので要件クリア!となるわけです。一応、もう一つだけ例を紹介しておきます。
この場合も平均賃金改善額の割合A>B:Cとなるので要件クリア!となります。ややこしいですよね。もしどうしても心配な場合はお問い合せください。サポートさせていただきますので。
これら以外に注意しておくべきことが下記二つ。
従業員の中には介護福祉士資格を保有していて、本来Aグループであるが、生活相談員として勤務しているためCグループに入っている方がいます。そういった方への対応は企業として考えておいた方が良いかもしれません。
Cグループで年収440万円を超えている人へは特定加算を分配できませんので注意して下さい。
以上です。本来であれば毎年2月に計画書を作成となりますが、2022年度は介護職員処遇改善支援補助金の絡みで2022年4月15日までの提出となります。提出期限に関する記事はこちら→https://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/korei/shido/documents/r040114jimurenraku.pdf
余裕をもって取り組みましょう。計画書の書き方に関して気になる方はこちらを参照下さい。
なお、第3の処遇改善加算である「介護職員処遇改善支援補助金」に関して気になる方はこちらの記事にまとめていますので参考にしてみて下さい。