デイサービスの取り組み−地域の中に生きがいを見い出す−

●家族や地域の子供たちを支えて

今回、ご紹介するのはKさん。Kさんの旦那さんは十分な教育が受けられず読み書きができません。そのため、朝の新聞配達を中心に仕事をして家族を守ってきました。Kさんは、妻として、その新聞配達を手伝いながら家事全般を行い、子供2人を育てあげました。病気になる前は「就労継続支援てだこ工房」の立ち上げメンバーとして、障害のある子供たちが親亡き後でも自立した生活を送るための就労訓練などをサポートしてきました。Kさんの二男も病気を患っていたので、高等部在学中にてだこ工房の手伝いに参加させ、一緒に洗剤作りやクッキー作り、アルミ缶集め、祭りで屋台を出すなどの活動を行ってきました。二男さんが就労された後、てだこ工房を退職されたKさんですが、てだこ工房は自宅の向かいにあったので、ちょくちょく顔を出して子供たちの成長を見守っていました。

●気持ちの変化

平成30年7月に左視床出血により浦添総合病院に入院したKさん。右片麻痺と失語症の後遺症が残り、右上肢の脱力感、呂律難がみられました。ちょうどそのタイミングで「てだこ工房」も300m程先のテナントへ移転し、自然と足が遠のいていきました。

発症後(平成31年1月22日)にリハビックスへ通うようになりましたが、意欲低下が顕著で、目標を立てても「自信がない・・・できるわけがない・・」と後ろ向きな発言が多くみられました。また、身内の不幸も重なって、リハビックスを休む事が増えていきました。

そんな現状を改善したい!とスタッフ間で話し合い、まずは週1回でもいいから来てもらうよう促しました。ケアマネージャーさんの協力もあり、徐々に通所されるようになり、リハビリにも慣れ始めたころ。リハビックスの相談員がてだこ工房の話をすると「今頃何してるかな?会いたいな。」と前向きな発言を引き出すことができ、新たに「自宅から300m離れたてだこ工房へ行き、子供たちや元同僚と話す!」という新たな目標を立て、それに向けて訓練を進めることになりました。

●訓練

てだこ工房の子供たちや元同僚との会話を楽しむため、言葉の出しにくさの改善を目的とした口腔訓練に取り組みました。発声練習では最初、声量も小さく読むペースもゆっくりでしたが、腹式呼吸を意識してもらいながら文章を読む練習、口をすぼめたり空気を入れたりする練習を行うことで、次第に声量が大きくなっていきました。うまく話せるようになってくると自分に自信がつき、他の利用者様とも積極的にコミュニケーションをとれるようになってきました。

歩行訓練では平行棒を利用し体幹・立位のバランス訓練等を行いふらつき対策を行うことで、歩き始めのふらつきは少なくなってきました。また、てだこ工房の途中に横断歩道があるため、横断歩道歩行訓練を取り入れました。当初は信号が赤に変わってしまいましたが、訓練を重ねるうちに青信号点滅の状態で渡れるようになってきました。

口腔訓練、歩行訓練の状態からスタッフ間でそろそろ「てだこ工房」に行けるのではないかと声が上がりK様と話し合い、日程が決まりました。

●てだこ工房へ

てだこ工房へ行く日。スタッフが一人付き添いました。歩道の凹凸、乗入口の勾配など不安な箇所もありましたが、転倒することなく歩く事ができました。一方、横断歩道は慎重になりすぎてしまったこと、交差点で車が通過したことが原因で立ち止まってしまい、青信号で渡り切る事はできませんでした。これは今後の課題です。

そして、てだこ工房に着いたKさん。子供たちが満面の笑顔で迎えてくれました。元職員さんから「懐かしいねー!元気だった!」と声をかけられ、満面の笑顔になるKさん。会話も弾んでいました。

●今後に向けて

今回のチャレンジを通して、「横断歩道で赤信号に変わってしまった。」「行くだけで疲れてしまい、帰りは車で自宅に戻った。」などの課題も見つかりました。Kさんも「自宅とてだこ工房を往復できるぐらいの体力は必要だね!」と自覚されていらっしゃいました。今後は3ヶ月に1度、息子さんと一緒にてだこ工房へ歩いて行き洗剤を購入したいとの声がありましたので、引き続き目標達成に向けてスタッフで意見を出し合いサポートしていきたいと思います。


以上です。最後までお読みいただきありがとうございます。他の利用者さんの記事も下記にありますので、もしよろしければご覧ください。

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